批評会録②「八がつはきいろいでん車」「アルデバラン」

【HP担より】

新型コロナウイルス感染拡大にともなう課外活動の自粛要請を受け、当面の批評会は、Discordを用いたオンライン上でのものとなっています。今回の批評会は4月22日に行われたものです。

 

今回批評の対象となった水面作「八がつはきいろいでん車」「アルデバラン」は、こちらの「新入生向けサンプル」よりダウンロードできます。 


『8がつはきいろいでん車』(水面)

この作品は「与えられた特定のお題で書く」という冬号の企画によって生まれた作品です。

今回のお題は「戦記」でした。

 

〈はじめに……作者から〉

これは戦記でしょうか?

 

〈良かった点〉

作品の背後にあるテーマを醸し出すことに成功している

過去に思いを馳せる過程で戦争らしさが出ている

イモ類を食べないという設定がリアル

子供と大人の目線を往復していてわかりやすく効果的

船のシーンが印象的

食べ物を過去を回顧させる道具として使っているのは効果的

 

〈改善点〉

説明的な部分があり、もったいない

戦争体験者と非体験者の相互意思疎通が必要

 

〈これは戦記?〉

戦争があることを感じられるので戦記

戦記というよりは戦争文学

従軍記と戦後記の二つの種類が戦記にはあり。後者に該当する

悲惨さを伝えるという点では戦記

 

〈おわりに……作者〉

以前失敗した戦争モチーフの小説を思いだした。戦記をかけというテーマが与えられたからかけた。戦争を体験していない人間が書く戦争文学とは何かというテーマにも結論が付き、いい機会だった。

 

 

 

 

『アルデバラン』(水面)

 

〈はじめに……作者から〉

連作短歌という形を取ってみました。

 

〈良かった点〉

音数のコントロールがうまい

読み進めていくと意味が蓄積していくところが連作短歌らしい

感情に訴える強い力を持っている

内容バラバラだが、共通点がありそれが不気味さを出している

5首目が好き

 →明らかにあり得ない設定なのに現実らしさがある

シュールレアリスムを感じる

反復するのは韻文らしくていい

 

〈改善点〉

表面的な世間への怒りが見えた

綺麗な表現に激情が隠れていてパンクしていた

 

 

 

 

『作者からの質問事項』

①文章内で季節感を出すポイントは?

俳句の季語を盛り込むこと

比喩表現

 →暑いから「溶けた」

嗅覚

すぐに季節を理解できるもの

 →蝉の鳴き声

 

②散文より韻文が向いていると言えるのはどういうときか?

文学の出発点は韻文の詩であり、肉体的感覚とは切っても切り離せないものであるという点

読み手が完成させるという点が韻文により濃く出ている

 

韻文は具体的なものを書くには向かず、読者に感情を抱く余地を残すもの