7月1日・5日 批評会

①知与古朽木「ゲテモノ」

 

はじめに

「思いついた死語を教えてください」書いたの2か月前なので記憶にないです。適当に批評してください。

  

批評

 現代落語みたいだなと思った。軽妙で枝葉末節に重みをもたせるセリフ回しや、無駄に情報量の多い地の文を逆手にとるジョークなど、ストーリーの奇想天外さと同じぐらいに細かい笑いどころを大切にしているように感じる。セリフ回しや各所に置かれたジョークは滑稽で作者の狙いは結構うまくいっているのかなと感じた。一方で情報の配置のバランスが悪いかなと感じた。特に情景の描写に割かれている分量が少なく、冒頭の「落語のよう」との印象もそこに起因するのかなと感じた。演者やセットがあればそういった情報を付け加えることができるのかもしれないけど、小説は情報をすべて文章化する必要があり、やはり情報の配分に気を遣う必要があるかなと思う。

 質問事項について。「げっ」は別に死語じゃないと思うんだけどな。「地球が何回回ったとき」ってのは今の小学生も使うのかな? 死語じゃないけど、半角顔文字もくそりぷおぢさん以外はすっかり使わなくなったね(^^)

 

 全体的に作品の完成度は高いかなと感じた。作品全体を通じて「面白いな」と思えた。主人公の語り口調が一貫して滑稽で、上手くいかせているような気がする。後半パートで主人公が行方不明になっているシーンも読み手に不安感を抱かせる効果をもたらしているように思う。ギャグ前面に出ていた前半部のシーンは作者の狙いが上手く読者を面白がらせているのかなと感じる。ただ、前半部でザリガニが出てきたあたりとかは、異様さや気持ち悪さのディティールが薄いかなと感じたあたり、やはり情景描写は足りないのかなと感じた。もう少し文章量を費やして異様さや気持ち悪さを際立たせていいとも思う。その点後半部の完成度は気色悪さの点でも滑稽さの点でも高いのかなと感じた。個人的にはマットの「welcome」とザリガニの入室をかぶせてくるところが面白かった。コミカルさとホラーテイストのバランスが良い。

 質問事項について。「ばたんきゅー」とか「ちょべりば」とか。とはいえ自分では使いません。「よっこいしょういち」は自分の中では死語ではないと思っていたんだけど、ニコニコ大百科には死語と書かれていた。

 

 自分にはかけない文章ですごいなと感じた。「げっ」で始まり「げっ」で終わるあたりにこだわりを感じた。リズムが面白い文章は書くのは難しいと思うので尊敬する。ザリガニは雑食だと思う。

 質問事項について。「ナウい」は死語でしょうね。小指で彼女を表すのはもうやらないんですかね。あとフードを裏返して「彼女募集中」ってやるのもある種の死語なのかな。

 

 終始一貫独白の作品は自分もよく書くので参考になった。「げっ」は死語ではない気がするが自分も小説の中では使わないのでもしかしたら死語かもしれない。悲しいなぁ。

 質問事項について。「あたりき車力の車引き」が弟に通じなかったのでショックを受けた。インターネット老人会のノリでいると、ウィンドウズxpデスクトップの草原を覚えている人はもういないのではないかと思う。でもそんなことを父親に話したら「お前は’95を知らんだろ」と言われた。

 

 つかみがすごい面白くて印象に残った。テンポもよくてゴキブリの形容の仕方とか説明とかが特に面白かった。アスタリスクの所の転換して以降の後半部がちょっと唐突で違和感があった。もっと時間の開きを実感させるものを入れてほしかったかなと思う。

 質問事項について。「アウトオブ眼中」とかあったなぁ。

 

 最初に編集会で読んだときには率直に「めっちゃ面白い」と感じた。作者の特徴である「文章量の多さ」を自虐するみたいなテンポの良さにつなげていったところが上手いなと感じた。「余計だけど余計じゃない」文の使い方が面白い。ゴキブリについての長大な説明とか、「げっ」で初めて終わる展開も巧いなあと思う。映像としての面白さと文章としての面白さを両立させている気がする。電気グルーヴのMVみたい。混沌のなかに秩序があるみたいな。それが面白さにつながっている点が文章力かなぁと思う。

 質問事項について。小学生のころに使っていた言葉がもはや伝わらないことに悲しみを感じる。

 

 死語について。惚れることを「ほの字」というのはもう死んだなという感じ。「きの字」で基地外を扱うやつももう減った。覚せい剤の隠語「エス」ももう死語ですかね。

 何某を「それがし」と読んでしまった。

 内容はすごく面白かった。純粋に楽しんで読んだので、手を抜いてるわけじゃないんだけどとくに言うことがない。ただ、情景描写の部分で、最初の段で装飾品を買う相手である老人についての描写がやや薄すぎる気がした。読書の解釈にゆだねすぎている気もする。

 

 全体的にテンポが良くて最初から最後まで気持ちよく読めた。最後の完成度がすごく高いので前半の粗さが目立ってしまったような気もする。ゴキブリの下りも面白いけどちょっと長すぎる気がする。エリエリラマサバクタニはポリコレ的に回避した方が良いかも(一同爆笑)

 死語について。「チャンネルを回す」というのは視聴文化が変わったせいでもう使わなくなった気がする。「ざまあみそづけ」ももうはやってないですね。

 

 この作品を批評しに来ました。すごい面白かった。ゴキブリの部分が大好きなのだが、これはたんにギャグとしてセンスがあるだけではなく、文章のうまさもあると思う。其れに比してザリガニの登場のシーンは若干わかりやすかった。静的な描写はうまいのだが動的な描写は難易度が高いのかなと思うが、この筆者にはポテンシャルがあるから乗り越えられると思う!

 死語について。「飛影はそんなこと言わない」っていうAVで、「べぇーだ」っていうシーンがあるんだけど、漫画的な描写を口に出すのは死語のような気もする。ただ単純に表現力がないだけかも。「B面」って多分もう言わなくなるんでしょうね。

 

 読み終えて想像したらめちゃくちゃ気持ち悪いなって思った。読み終えた後にそういう感情を引き出せるのはうまいなと思った。全編通してうまい棒の話が続いていたところ、まさか伏線として回収するとは思わなかった。単に脈絡なく続けるのではなくきちんと筋が通っていたところも巧いなと思う。気持ち悪い話を面白おかしく描くのは難しいことだが、主人公の視点を取って書いたことが成功につながったのかなと思う。

 死語について。ツイッターで「ふぁぼる」というのはもう言わなくなった気がする。「巻き戻し」ってテープじゃなくなったものはもう言わなくなった気がするが、ラジオやカセットではまだ使う言葉なわけで、死語と思っている者でもどこかで使っているかもしれない。

 

 言われている通りテンポのいい文章だなと感じた。うまく言えないがすごいなとは思う。気持ち悪さを演出するときに、長めの文を使って描写するのはいい方法なのかなと思った。一番初めに読んだときには「げっ」のところと、三百円のくだりが少しわかりづらかった。「といっても」の使い方に少し違和感があった。

 死語について。「タピる」はもうすぐ死語になる(断言)。

 

 この作品を読んでまず思ったのは、アイデアのまとめ方が素直に面白かったな、ということです。変な物に手を出して、不思議な力を手に入れるというのは割とよくある物語です。ですが、よりによってザリガニかい!そして何?食わせんのかい、それを!オチの「げっ」っていうセリフもいい味が出ている気がします。ただ、これは突っ込んではいけないと思うのですが、石を売るおじさんにはなぜザリガニは寄ってこないのか…そこだけが少々気になったところではあります。無論、そこに突っ込んでしまうと作品が崩壊してしまうので突っ込まないことそのものはいいと思います。でも、主人公と石の出会わせ方に工夫の余地がある気はします。

質問に移ります。死語を教えて欲しいとのことですが、最近自分は「バッチグー」が死語だと知り非常に驚愕しました。あと、たまにパソコンのワードをワープロと言ってしまいます。以上です。

 

作者からひと言

 最初の描写が性急すぎた点については修正ミスがあった。ゴキブリの文章は前回の自分の文章に対する批評への意趣返しです。ザリガニはゲテモノだと思うのでタイトルをゲテモノにした。みんな褒めてくれたけど自分はクソつまんないと思ってます。

 

 

②村崎陽気「球拾と球売」

 

はじめに

「大学卒業後に執筆するか」「執筆する場所はどこか」

個人的にスポーツと童話という組み合わせが珍しいかなと思い書いた。

 

批評

 久しぶりに童話を読んだのだが、人間じゃないものが人間として動くなど、王道を踏まえているなと感じた。たしかに「野球」と童話の組み合わせって珍しいかなと思う。後味の良いとも悪いとも言い難いラストは童話らしさを感じた。

 質問事項について。ネットの海に小説を垂れ流すことはあろうが、それで金を稼ぐということをするかどうかは別の問題。興味はあるが、できるかと言われると……。場所は特に選ばないが、思いついた瞬間に文字に残せるようにいろいろ工夫はしている。メモ帳やアプリケーションなど。

 

 野球の話からリアル世界でのことかなと思ったけど、猫がしゃべることに誰も疑問を持たなかったり不思議な世界だなと思った。童話であるということを強く意識しなかったが、いわれればそういう感じだなと思う。ラストの不思議な感じとか。

 質問事項について。卒業後プロとして書くことは無いと思う。ベッドとかで執筆するほか、アイデアをメモすることとかはある。

 

 童話にありがちなテーマとは言いつつ、そのうまみをよく生かしているなと感じた。日常の一コマとリンクしたふしぎなせかいの設定をきちんと作れるのはすごいなと思う。

 質問事項について。書きたいとは思うが生業になるとは思えない。自分はずっとスマホで書いてきたから外でもできるのだろうが実際は家の中でやることが多かった。

 

 スポコン系と童話ファンタジーは一見かみ合わせが悪いように思うけど、そこをいい塩梅に混ぜたところに巧さを感じた。展開に若干強引さはあるけど、それを上回るよさのある作品だと思う。終幕についても、後味のすっきりさと、余韻のバランスが優れているなと感じた。

 質問事項について。執筆は続けたいが売りたいとかは思わない。場所は不定だが、思いついたその場でメモを書くということは結構している。面白い話を聞いたときにその場で小説を書き上げたこととかはある。

 

 短いけど雰囲気のある作品だった。ネコの姿が気になるけどちょっとよくわからなかった。ネコは一応主人公になっていると思ったのだが……。

 質問事項について。いろいろな場所に住んでいたので、カフェとかどこでも雰囲気があまり変わらないところで書いている。家だとニュートラルな視線で見られなくなるので外で執筆するのが好き。小説を書くとなれば、大事になるのは「ロマンを感じさせる空間」だと思う。田舎出身だったから自分の家の周りには木がいっぱいだった。これは浪漫でしょ!原始世界とのつながりを感じる!インスピレーションでしょ!(以下熱弁をふるう)

 

 この作品は童話として読むべきなのか小説として読むべきなのか……。童話、つまり子供向けの作品とするならば、「腹痛」など漢語を多用する描写や、メッセージ性に欠ける文章は「童話的」ではあっても「童話」ではないような気がする。小説として書いているなら、「童話の形式」を取るのはふさわしくないと思う。童話的に書くべきでない部分で、童話的な書き方をするのは逃げのような気もする。

 質問事項について。執筆で食べる気はない。できないから。そんな感じ。

 

 質問事項について。執筆は兼業でやりたいと思う。執筆は家でやるかスマホでやっていたが、大学に上がってからはメディア棟のラウンジで書くのが好きです。究極的には執筆場所は全ての空間。

 

 子供向けの童話風かなと思って読んでいたが、このレベルの文章を読める子供、と考えて絵本の次レベルを想定しているのかなと感じた。タカシクンの成長がもう少し欲しいと感じた。雰囲気はあるのだが、展開としてしっくりこない。

 質問事項について。執筆については趣味程度なのかなと思っている。執筆場所については主に家。最近では図書館でもいやる。書いているときに頭をがりがりやったりするので外ではできない。インスピレーションは大事だと思う。

 

この作品を読んで自分との力量の差をまざまざと見せつけられて心が折れそうですが、僭越ながら批評させて頂きます。僕は今回の春号ではこの作品が一番好きです。童話、というか、絵本のような素直で素敵な作品だと思います。自分の読書経験が絵本から始まったこともあり、非常に懐かしい気持ちにさせて頂きました。童話は、基本的にロジックが存在する余地のない大変特異な土俵だと僕は思います。その条件のど真ん中を行くようなスタイル…いいですねぇ。主人公のたかしと猫の出会い方、別れ方もうまい。普通、猫がしゃべった時点で人は腰を抜かすか、捕まえて見せ物にするか、とにかく世知辛い世界へとつながるでしょう。でもたかしは初めから猫がしゃべることに疑問を抱かない。それが読者に「しゃべる猫」の存在を素直に肯定させている。で、突然の別れ。何の後味も残さない、実にあっさりとした終わりかた。それすらにも疑問の余地を抱かせないんです。全くロジックが存在せず、それでいて物語を成立させる…実に優しく、なおかつ心に残ります。

質問に移ります。最初の『就職後どうするか』ですが、僕はアイデアが思い付く限り書き続けたいです。職業にするとしたらおそらく兼業になりますが。ただ、作家を職業にしたいとはあまり思っておらず、自分の中にあるアイデアを物語にしたい、そしてそれを文字にして読みたいと思うだけです。自分は作者である以前に、物語を心待ちにする読者でもありますから。

もう一つ『主な執筆場所』ですが、基本的はずっと家の自室で書いていました。大学に入ってからはたまに図書館で書いたりしています。また、批評会が始まる前の空き時間にこの教室で書くこともあります。

 

作者からひと言

 個人的に「野球のボールを売って暮らす」という設定を思いついたことをほめたい(自画自賛)。ほんとうはあとにもう少し続いていたのだけど、蛇足ではと指摘されて割愛した。小説を書くのが趣味だとは今まで思えなかったのだけど、それでもいいのかなと感じた。文芸サークルでは活動の本懐を互いに目にすることがなく執筆の様子が気になった。