6月24日・28日 批評会

6月24日の批評議事録について、担当者のデータが消えてしまったため、28日の議事録のみを公開しています。

お詫びいたします。

 

葉桜輝月「邪意の澱(おり)の底で」

 

はじめに

現実世界の拡張の外にある作品→「ファンタジー」

駄目な点は何点か自分でも発見

質問について→小説やアニメなど、どういうものでも

景色・建物の観点を→描写の参考に

 

批評

質問:中国のイメージに多い針みたいな高い山

くそでかい竜とかが飛んでいそうな山山

観光に行ってみたい

 

文章が上手く、読みやすい

合間合間から推察できる設定

原点方式で採点すると満点に近い

長編か短編かがわからない割り切れなさ

少女の過去などを示してもよかったのでは

 

ファンタジー的な世界観好き

どういう世界観とかを想像して書くのはすごい、それを読者に考えさせられるような文章

質問:退廃したモラルの欠けた街としてのソドムとゴモラ

 

昨日やっと読めた

構成は十分→速読でも十分把握できるような文章構成に感じた

明瞭な書き方で分かりやすい

各シーンは短いので、わかりやすいが、逆に短すぎると思う人もいるのでは

世界観の構成も十分

奴隷→世界各国でかつてあったと言っても過言ではない

ゆえに、誰にもわかりうる「奴隷」の概念を用いた点は評価できる

なぜファンタジーにトライした?

不思議に思わざるを得ない部分→「黒い」世界…現実世界にも大いに通ずる→ファンタジーとの矛盾

奴隷制やオークによる支配を承認している点では旧世界的で、より現実的に思われてしまう

質問:国を知りたいというよりも個々人の歴史を見たいほうが強い

中世みたいだとの意見について→中世欧州諸国では奴隷制はなかった→宗教的側面から…

 

男と女の相互理解の薄さ→脱出にお共する迄の深度ではないように思う

事件を通して、心の距離が近づくようなイベントがあってもいいと思う

「ここは停滞した楽園だ」→ここのあとのひとくくりがテーマ?

奴隷じゃない人々の生活ぶりを描くことによって、上記がよりわかるのではないかと思う

(町の描写を入れるだけでも十分)

人間の安定志向などへのテーマも十分含まれているのに、読み手に「書き手の顔がわか」らせない工夫

普遍的なテーマに行きつくまでの過程を十分かつ巧く書けていたからだと思う

質問:アステカ文化の遺跡→石造りの遺跡に行ってみたい

→自然との協調性と、威厳の並立

→生贄文化に興味

 

ジャムパン食べながら読んだ

ファンタジーと見せかけて、奴隷が妻になるところで意外性

面白い世界観→小説の新しい所

2回目は「新婚夫婦の話」の様に思う

→付き合った時から23年経てば本当の夫婦に

→奴隷の女が母性本能を出したところで上記を満たす

→手紙で浮気するかと見せかけて、破り捨てる

→嫌な奴からの蔑み(=男のキャラ設定)でなく、男と添い遂げる決意をするシーンとなる

→怖いがついていくことにしたことで、「本当の夫婦」になったとされる

→現実世界的な新婚夫婦の物語のように思われた

質問:ベトナムとロシア

ベトナム→歴史的な人民の強さと、のほほんとした感じとのギャップを確認したい

ロシア→好きだから、建築も好き、スターリン建築はロシア人ならでは

赤の広場・クレムリン…帝政ロシアとソ連、ロシアの入りまじる場所として、「時代のタイムズスクエア」として興味

 

ファンタジーを読まない人間であったが、それ以上に「人間のありかた」「人間の尊厳」というテーゼをしっかりと示せている

人間の極限状況下での意外なる転換→この発想の逆転を導き出した時点ですごいと思う

確かに女性の状況と思考の齟齬はあるが、年数を経れば自発的であれ何であれ、思考の一貫性を伴うある種の「学習」を行うことは有り得る・確かに学者って肩見せまいよね→奴隷を買って妻にしちゃう発想の突飛さ・柔軟性が設定と合致

質問:ニューカレドニアの美しい白い海岸で3日間外にいて干からびたい

 

作者挨拶

世界観の精緻さ→気を遣った部分

なぜファンタジー?→現実的テーマを書きつつも、現実世界で捉えてほしかった

異世界での現実的テーマを書きたかった

現在と過去を交互に→きれぎれになって分かりやすいと思った

現在の方のウェイトを徐々に増やしたつもり

意外な処の評価や批判もいただけた

今後もいい作品を書きたい

 

 

南風こまち「遺された仕事」

はじめに

 

 

批評

推理小説が大好き→トリック的には(鉄道モノ的には)完成されている

西村京太郎は読まない、鮎川哲也推し

簡単な時刻表から続く→「登場モノ」

古畑任三郎、コロンボなど

解決が鮮やか

名探偵が出てこないのも、「トロい男だ」の皮肉に効く

もうちょっと動機に厚みを

短編になると、叙述的になりがちだが、バランスが良好

作者に盛大な拍手を

質問①ノーコメント→ネタバレになる

鉄道はすべてにトリックのネタが仕込まれている

②ご都合主義だろうが何でもいいだろ

ディクスン・カー→密室トリックばかり書いた男

3つの棺」にて、「わしらは小説の人物だから」とのメタな台詞が

密室ならなんでもいい

俺の考えたトリックは唯一だ!という主張をすべき場でもある推理小説

リアリズム派の推理小説を読んでみるのも

「作者の顔が見える」ことが「ご都合主義」だと思う

「夏の葬列」→偶然が重なるあらすじ

作品全体が読み手を殴りつけてくる「ご都合主義」もあることがわかる

推理小説は、昔から「チェスみたいな」小説→人を駒みたく動かす作品

建築的な美しさと破壊的な美しさが推理小説にはある

推理による「建築的な美しさ」→飛躍はあるべきではない

本作品では完全犯罪という犯人の想像が崩れる→「破壊的な美しさ」

ご都合主義的な無理さ加減はなかった

 

4ページで起承転結

トリックもわかりやすい

内心の焦りも記される

インターネットの履歴を辿ることも可能なのに…→「トロい男」の強化?

事件の難題化→電子機械に対してこのぐらいの工夫がとれるだろうという点もあるが、それも逆に味

大衆向けの作品として十分

 

起承転結のまとまり

ミステリ小説は書けないので、すげえ…と思った

白馬氏の妻の反応の描写を入れてもよかったのでは?

愛しさあまって憎さ100倍→妻にも制裁を加えたくなる

質問:①なし

②「設定のご都合主義」と「展開のご都合主義」

前者は致し方なしだと思う

偶然は存在せず、人間や万物の動きの結果としての「偶然」なのでその過程を描けばいいと思う

 

王道を行く感じの推理作品は初読で、面白かった

どろどろさがあって好き→愛憎劇が好きなので、もう少しその描写をいれてもよかったと思う

トリック・殺人の描写は巧い

アリバイ描写がもうちょっと欲しかった

質問:①楳図かずおに電車で会った

②消そうとすると、余計に出てしまうのでは

 

質問:②作品は、作り物「だからこそ」ご都合主義は不可避ではないか

ご都合主義の面白さこそ小説作品の神髄

ご都合主義は、むりに削がない方が良い→リアリズムに富みすぎても面白みが減る

どのジャンルでも言えるが、うまい運び方のためには必要

むしろ「都合いい」世界の構築を取り組んでもいい?

 

「トロい男」という幻聴→「頭痛が痛い」と同じように重複している表現?

質問:②ミステリのご都合主義…「偶然と奇跡のご都合主義」と「合理性を欠いたご都合主義」

前者は致し方なしだと思う…事件発生までのプロセス、後者は構成の再確認が必要

 

質問:②の追加

「そうしないと進まないご都合主義」「結論に持っていきたいための強引なご都合主義」

後者→本来的な選択を誤るなど…→避けるべき、自然な流れにするように努める

前者→致し方なし、現実では「偶然」となるのに執筆では嫌われる=「執筆の限界」

なくせない→これを感じさせないように工夫は可能

前から不穏な動きがあったとか…→そもそもの設定にしてしまうという方法

 

前触れを描くことがそもそもご都合主義的に

そこで「作者の顔が見える」のが、「ご都合主義である」こと?

対症療法的な「ご都合主義を消す」事だけが可能だと思う

 

作者挨拶