6月17日・21日 批評会

6月17日

 

異月光夜『破れた恋を愛しています』

 

はじめに

花言葉をモチーフに…

題名在りきで作ったが、いつもは最後につけるが、皆様のつけ方が気になった

 

批評

・全体→表現巧い…P.7女性の動きの表現など

・内容…詰めが甘い ・自分が一番考えさせられた

・「本当に」男性を殺したのか?→なぜ殺した後に自殺しなかった?

→貴方が死んだなんて信じられない→ゆえに「本当に」殺していないのでは?

明らかな女性による他殺の証拠はないと思う

運動神経の良さで、溺死の可能性が低いように思う

女性が殺していない場合、誰がやったのか?

一週間前と昨夜というタイムラグ

二人の徒歩圏内→もっと早く発見されるのでは?

女性はいじめを受けていた→いじめていた集団が行うのであれば、「いじめのターゲットを奪われた」などの理由や、集団ゆえに殺害可能となる

「グループの逆恨み」としての男性の殺害という可能性

あくまで推測ですが、「間違いを生む」粗さが出たのは事実

.内容の要約としての「タイトル」→候補が多数

 

割といい作品→書き方は面白かった

言葉の選択が良かった

主観と客観の入れ替え方が巧いと思った

主客が混ぜこぜになっていることもあるが、本作品ではそれがしっかりと区別化されている

①のような推測はできなかったが、描写・表現などの点ではやはり楽しかった

 

見開きのみである中、美しい表現で巧く書けている

気になる点…主観・客観の交互に現れる表現→一行明けで区別し、「女性は」でわかる

「目を覚ますと…」と、「何故…」では確かに一人称なのはわかるが連続して一人称であるのに違和感

①について…「本当に」男を殺したか、は私も分からない

衝動的な殺害であれば、一週間というタイムラグ生じる

計画的な場合、いつ殺されたかがわからない

→「死後一週間」などを入れれば、ラグが消えると思う

男女は既知の間柄→男の抗議は早くてもおかしくはない、電話口でもう少し抗議する内容が入ってもよかったのでは?

Q.まず「仮テーマ」を決定→書き進めた後、変更の有無を吟味して正式なテーマを決める

→基本的に変わらない…全体の流れは最初に決めてしまうので

 

すごく好き

「相互理解の破綻」

彼への語りかけで始まる作品

読後は、不足感、感情移入が少なかった

→具体的描写の少なさ…いじめを受けていた時、助けてくれた時、お隣さんである点などが凝縮されすぎて、「流れの設計図」のような感じ

主客の混合→脚本めいた感じ

いじめのシーン→極端に少ない…男への印象や女の好感などの情報が少ない

「相互理解の破綻」がテーマ→男の姿も重要なのに、女の一方的な心情吐露に終わっている

出会いから決別迄の男の心情の少なさ

女の報告調→想像可能性を狭めていた

主客の交互に現れるパート→主=過去、客=現実の状況という区別

現実パートでの女性の心情の揺らぎなど、「現実の女性の心情」の情報、すなわち客観パートの不足感が否めない

男への一方的な報告だけでも然り、「現実の女性の心情」の描写を追加するも然り

男を殺したことを「覚えているか」が重要だと思う

「殺す」ことは破綻の決定的なシーン→「覚えている」なら、心情の揺らぎが加わるはず

「思い出す」のもあり得る→思い出す過程と思い出した瞬間のドラマも加わる

描写の巧さはすごい→彼女の異常な愛を示すことはできているが、もっと加えてもよかった

元々の構成は良い「ダイヤモンドの原石」であった

 

見返してて…→ストーカーなのはわかったが、一週間前以前の綺麗さと一週間前の醜さの対比なのかなと思った

→前者では、ストーカーの描写はなかったが、後者に入ると突然加わってきたので

「描写の少なさ」→一人称シーンの中での三人称シーンの関連性の薄さが原因?

一人称では女性の考えを示している→三人称の現実の行動と繋げるのが難しい

菊の花言葉→最初の女性がもつ花をはっとさせる

→それなら菊にピントをもっと合わせてもよかったと思う

→後半はストーカーにピントが行きがちだった

「何も覚えていない」→変わった男とも付き合いたいと思っていたのか?

Q.③と同じだが、最初と最後で大きく変わる

 

一番の強み→一人称での「女性の視点」の一貫性…他の事がわからないこと

→ストーカーであることは男からいう事ではじめてわかる

家の隣はわざと? おかしいなという点を自分で読み取るしかない点は非常に良い

殺した自覚がないからこそ、一人称では殺害の描写もなく、誰が殺したかもわからない

→三人称にもうすこし女性の殺害の描写を入れてもよいのでは?

一人称の対象の心情はかきづらく、読者も判りづらい

→男性の描写もそこはかとなく入れてみればよりわかりやすいはず

菊の項目→もう少し欲しかった

→途中で菊を入れてもよかったのでは?

Q.最初から考えるのはできない→テキトーに打って行って途中の文から使えそうな内容を取り出し、言い方を工夫してタイトルにする

ラノベみたいな長いタイトルを考えるのも一つの才能

 

短いが、それがいい

菊→「菊の色」が男の印象であったと言っている

「色の意味」が不明→黄色と赤は、落ち葉や血を示している?

川から突き落とす→血=赤のイメージが薄い

黄色も落葉しかない

菊の「色」に関する表現をもう少し

 

作者挨拶

タイムラグ→詰めの甘さ

一人称と三人称→描写不足だった

三人称がメイン→一人称のつもりだったが「らしい」などがそう思わせたのかなと思う

菊→エッセンス程度のつもり

菊の色→男性の描写に使いたかっただけ

 

 

鬱蝉せみ子『墓掘の人々』

 

作者から

3日で書いた→焦った部分がないかと心配

宍戸君に訂正してもらったので、ある程度は補われていると思う

3回再読した

衝撃的な内容でも、考えさせる内容でもなく、雰囲気作りを中心に

ダークファンタジーのラノベ風な体裁

変な点などがあったら是非…

 

批評

長い作品だが、全体の構成は良い

→暗い雰囲気の中、最後はバイオレンスなハッピーエンドという「メリーバッドエンド」の非常に良い例

→読者を暗くさせ、ハッピーエンドを呈示して「暗い雰囲気で見ていないか」と投げかける

群像劇の型式→墓掘3人とシモン、ドレミアの視点に基づく

→成功はしていると思うが、「違う視点を用いて、読者の既知を登場人物が知らない」面白さが薄い

→が、一人の視点だけで語るのでは、この作品は成り立たない

※死者の火葬や、黒死病などへの恐怖、神への投げかけなど、日本と外国の文化の差ゆえに理解が薄くなってしまう点がある

→いい作品だが、表面的理解しかできないのが悔しい

 

地名の登場(P.59)→宮沢賢治の「イーハトーヴ」のような表現なのか?

メリーバッドエンド→主人公のデッドエンドは好きじゃないが、非常によくまとまった

 

ダークファンタジーの暗い雰囲気は非常にうまかった

「メリーバッドエンドエンド」で巧く締まった

村、神などの表現

ドレミエンの存在の意義

完全に読み取れてはいないと思う

P.74の「∞」→死は無限を示すと言えなくもない

エピローグ→誰の視点?

長編を書いたわけだが、どうやって書いた?→「短編だ」という感覚で書いた

ストーリー、キャラ、流れなどを完璧に決めおいて書く事が理想

 

「黒死病(ペスト)」→紀元前に大流行し、フランスで言う「14世紀の大流行病」として?

ラノベ風の一環として「ルビ振り」を行ったが、ルビがつけられず、なんとか括弧書きで入れた次第です

 

最後に

悲しい気持ちもあるが、批評してもらえた点ではやっぱり良かった

群像劇の意義について→ナラティブ・ジャンルで、読者と登場人物のギャップを楽しむことは確かに重要だと思うが、ゲームにあるような「ある視点の導入」「一人の心情を加えていく」点を重視している

カミ→神への恐怖は昔から日本で畏れられていた…世界の根源としての「カミ」

各宗教→形のない「心の中での」「カミ」であって、唯一神とは違う

地名→特に意味はない、加えてみてもいいかなと思う

ペスト=歴史的な「黒死病」なのかについて→この雰囲気の中の、一種の「流行病」として暗い雰囲気を醸し出す要素として…

フランスでは「ペスト」とは暗いイメージを与えるものである→

 

621

 

異月光夜『破れた恋を愛しています』

 

批評

構造は興味深い

ありがちな構造だが、表現や第3者を加えた人間関係の構築

性格を生かした叙述トリックなど、基礎的な部分はよくできており、破綻はなかった

全体は、思いこみ

イカれているが、真面であるように見せかける必要→女の偏り具合をもう少し

全体を一人称にすると、叙述トリックをより強化し、雰囲気作りに活かせる

古典的作品を面白くするには、作者のひねりが必須

女が犯人であることはわかりやすい

犯人であることを忘却し、犯人捜し

自殺未遂ののち、殺人に走るような描写で終わらせてホラーの魅力を高める

単なる「女が犯人でびっくり」では薄い

→もうひと工夫の必要性

質問:方向性の確定後なので、プロットの構築後や印象的な文から引用することも

→当初のタイトルと内容の方向性に違いが大きかったことがあった

→だから、最初であるとか最後であるよりも決めたいときに決めてもいいのでは

 

攻撃性が足りない→パンチが足りない

基本はきっちりしているが、組み方などで鋭い作品にできたと思う

3人称を貫いて、最後に一気にネタバラシなど……

サイコ性でなく、「3人称での女性の美しさ」を重視してもよかったと思う

女性の語り口については重視して良かったと思う

 

よく考えられているが、「古典的」に思われるのは確か→私はさして気にしない

質問:頭のどこかで追っているが、読者は途中で忘れてしまうと思うので重要視しすぎるのは違うと思う

全て終わった後にタイトルを入れる→曖昧さを含んだものにしようとしているが、露出性を出して後で理解できるようにするのもあり

 

質問:ダブルミーニング・トリプルミーニングになるタイトルを目指すことも

「○○の○○」という構成のタイトルが嫌い→それを避けるようにしている

 

最初と最後がニュースで締められる

女の視点中心→自分では書かず、新鮮

サイコパス感が薄いとは思った

質問:細能に決まるときもあれば、保留して最後につけることも

→ぼかした感じにするように

→読了後に納得できるようなタイトルを目指す

 

最後にどんでん返しすることが主目的なら、最後のニュースはどうなのか?

一見無関係に思えるものでサンドイッチ→伏線にする

定石パターンのひとつ→驚きを狙うのなら、ニュースのくだりは必要なかったのではないか?

→最初のニュースで最初から女への懐疑が出てしまう

具体的描写量の増加推奨について

→どんでん返しを試みるなら、こういう出来事があったというのを混ぜることになり、読者の想像の余地(「遊び」)を導入し、結果との照合などの興趣や作者の書きやすさにもつながると思う

質問:タイトル決定してから製作、照合して変化させることも

 

女の子の視点と俯瞰の配分がバランスいい→主観の方に依拠するのは難しいと思うので

ボリュームを増やすなら、亡くなった男の家族の視点など、普通の視点を取り入れてもいい

→女性の狂気性がそこではじめてわかるようにしても面白い

どんでん返しだけでなく、恋愛の経緯などを表しているのがいいと思う

→ただ近づきたいだけなのが、段々とエスカレートしていくのがよかった

質問:最後に決定→タイトルを見て内容が分かるのは避ける

「きみ」「僕」を入れるタイトルが苦手

タイトル在りきの作品があるのは認める→最初か最後に決定

 

コンパクトにまとまっていて、綺麗に纏まっていた

→女性の語りも綺麗

サスペンス度が足りない→女性の口調の柔らかさと混ぜづらかった?

「うわぁ…」と思う女性のフレーズを入れてみてもよかったと思う

ロワール・ド・ダールの感じ

質問:気が向いたら…

小説の雰囲気を崩さないことに気を付ける

 

味の薄いコンソメスープみたいであった→刺激が少ない

意識と無意識→後者の描写が少なかった→刺激の少なさの一因?

→最後が無意識で終わった点もある

質問:一番最後まで書いてから、合うものを選択

→物語の雰囲気を決めてから決定

 

ニュースについて→ぶつ切りにしてみるのは?

最後に「男性の遺体」として、死者が誰かがわかって衝撃を与えられる

「花言葉から書いたなら、どのように書いたのか」が知りたい

※半ばまで書いたあとに、結末迄書いたものもあれば、そこで中断することも

 

最後に

花言葉から書くことについて

→花を出すタイミングを重視するのが良いと思う

→花言葉自体の解釈を行うことも重要

 

 

Ⅱ:鬱蝉せみ子『墓掘の人々』

 

はじめに

人がたくさん来てうれしい

本作品の計画→今回は慌てて書いている(3)

ラノベのダークファンタジーみたいな作風

「黒死病」と「ペスト」→これは大差ない

今回使用したこの語については「雰囲気づくり」のためのものである

 

長い作品を成立させる時点で強い

自分はまだその段階に至っておらず→ゆえに「批評が出来ない」

短いのがいいよという批評も資格がないと思う

尊敬マンでありたい→「3日で長編書いた」という強み

 

(吉津)

自身の矜持にかけて批評

パッションに富んだ作品

要素的な側面から批評

群像劇→役割がしっかりしている

偏重する人物が出てもおかしくないが、各人が満遍なくかつ役割をしっかり持っている

息遣い・表現が目覚ましい

15番、22番の優菜→満足感から虚無感に苛まれていく優菜

→作者が人物になりきれている

エリサとバイオレットのやりとり→パンチのあるシーンと心情

エリサの葛藤→黒い渦の術中にはまっていく

エリさの死亡のタイミングも完璧

∞マークも粋

ガラスの白→ペストの黒との対比

メリーバッドエンドで終わらせる

2幕でのバイオレットのアクションがもう少しあってもよいと思う

「真白な」エリサの死体の意味?→死体の表現もなく、これは意図的か?

優菜とシモンのやり取りの不足感

→第3者的な優菜だが、消失や教会への疑惑などの世界観への切込みを担う

→優菜とシモンはこの切込みを担うべきだが、何が分かったのかが不十分

ですます調のシモン→語りかけなどで恐怖の異常性を示している…シモンの人間性

シモンとアルベルトのやり取り→アルベルトの神は「システマティックな機構」として示される

→神の裏側にある組織性を含ませている表現多数

これは、抽象的な墓掘りたちの神と対照的

ドレミエンの立場が分からない→神側に居つつも、その破壊を試みている

最終幕の「死体を持つ男」の正体?→エピローグでも語られず

→一般解釈しかできないマンには結末が消化しきれず

 

長編→内容に辻褄が合わなくなってくる時が有るが、本作品ではそれがない

登場人物の息遣いが読んでいく毎に分かるように

群像劇は、メリーバッドエンドに最も向いているのではないか?

多角的視点→他者視点ではバッドエンドでも、主観ではハッピーエンドであるということでメリーバッドエンドを作りやすくなる

面影から実体のある「彼女」へと変わっていく

「死色」→灰色・無彩色だが、結末の彩りとのコントラスト

首を垂れるしかない素晴らしい作品

「生きている村民」の描写→実は誰も生きていない?

→「うん千人も生きている」というセリフはあるが、果たして真相は?

 

校正のときに初めて読んで、面白いと思いながら進められた

画としては衝撃的だが、人間の関係性などでの吉津くんの言った「2本柱」が巧くたっていた

世界観が設計的かつ独特→ディストピア小説の様相

読みやすさにつながった

各人の哲学的側面が深く考察されている→社会的側面の面白さも含まれる

一段、二段上にある作品

シモン君が好き…優菜とシモンの描写

丁寧な描写で、わかりづらさがある

打ち切り感が否めない→優菜・シモンのパートの不足などがあるが、「その先」があったのではないか?

クライマックスの盛り上がりに対して、ダークファンタジーの片手落ちで終わるような感覚

エリサ・バイオレットの百合の成就が描かれていたのに、優菜・シモンの解決がないのが残念

神学的側面の解答も示されていない

キャラ・役割がきっちり→ドレミエンの食えない感じが好き

作者の視点が混ぜ気味…哲学性が「神に否定的」という点で共通しすぎ、変化も薄い

シモン:神への信頼→周りの人たちの絶望によって変化する など…

切り出した側面をしっかり深めることが課題だが、全体の構成は非常にうまい

 

理詰めできず→情報量の多さ、語り尽せない「パズルのピースが不足した状態」でも面白い

百合エンドについても、経緯をしっかり描き「結末ありき」のスタンスになっていないのが良い

多角的側面での掘り下げも可能ではある

作品のいびつさ→小説云々以前の「情報不足」といういびつさ自体がいびつなのだが、それが味になっている

→ディストピア感を醸し出すいい味にも

この作品、「怖い」。自分では書けない…

 

作者挨拶

描写などについてはごもっとも

「生きている村民」を描かないことは故意

秘密・ミステリーの様な側面は、短編としての面白さを保つためにあえて語らず

複数のエンタメの価値→ストーリーの「わかる・わからない」というバランスのため、哲学的な側面を均衡のとれたものにしたかった

→エンタメ的な側面であれば、もうすこし増やしてもよかった

神は定義があやふやなもの→皆さんの解釈が面白い

哲学的議論を出すときりがない

エリサ・バイオレットのカップリング→バイオレットがエリサを救う場面は?

→異常な日常…機械的に墓掘りをする日々

→バイオレットのキャラとしては「現状を認めたくない」

→エリサは「死ぬことを恐れない」キャラ

現状を認めるか否かというギャップを持つ2者の微妙な関係

 

編集・校閲をしてくれた「先輩」に感謝したい→言語の問題を頑張って直してくれた