6月3日・7日 批評会

桐方柏江「仮面舞踏会」

 

作者挨拶

「今まで良くも悪くも人からの影響で自分が変わったことはありますか?」自分の経験や、高校時代の友人に相談される中で構想した作品。

 

批評

①自分が挑戦したいテーマ、投げかけたい価値観はとてもはっきりしており、方向性はブレずに定まっているなという印象。狙ったのかどうかは分からないが、地の文の滑らかさと台詞のぎこちなさとの対比が、内外の矛盾に葛藤する主人公の状態をうまく表していてよかったと思う。気になる点は二つ。一つは文体が「教科書チック」なこと。骨子につながる描写しかなされておらず、表現も心情以外の事項についてはシンプルにすぎる。もう少し肉付きのよい文章が書けたのではないかと思われる。もう一つはテーマ性が露骨に出すぎている点。とくに、伏線を回収せずに無理やり終えてしまっている感が否めず、結論ありきで書いてしまっているなという印象を受ける。テーマをうまく書き表せるようなストーリーを組む工夫をすればいい文章に仕上がったのではないか。また、自分の中でのテーマがはっきりしているだけに、抽象的な語りが続くあまり誤解を招きやすいところだと思う。例えば、「仮面」というテーマで語られているものは、どのレベルの「仮面」の話をしているのか。人によってはごく当たり前の社会常識や文化的慣習も仮面と見なすであろう一方、少女が家庭に特殊事情を抱えているという問題が示唆されており、そうした深刻な問題を誰にも話せないという意味での「仮面」であるとも考えられる。こういった部分が抽象的な語りで構成されているだけに、分かりずらくなってしまっている。その意味でも、やはりもう少しテーマにあった「肉」を与えるべきであるように思う。

 質問事項について。多くの人からの影響の積み重ねで生きているので、誰のものが大きかったかあげるのは結構難しい。

 

②自分は作品を書くにあたって価値観を一貫させることが苦手なので、テーマ性が貫かれている本作は素晴らしいものであるように感じる。文体が小説の割にはやや淡泊だったかなと感じた。テーマ性に対するこだわりは素晴らしいと思うので今後に期待したい。「仮面」について。他者との交流の中で「自分」の中で構築されるのだろうなと思う。

 質問事項について。外部の影響の合算が自己だと思うので常々変化してるんじゃないかなと思う。

 

③物のとらえ方はすごいなと思う。自分にはかけない作品。陳腐な考察だが、自分の表面的な「仮面」と現実との対比は女性作家に多いような気がする。言い回しが回りくどい箇所がいくつかあり、とくに狙いがないのならばもうすこしシンプルにまとめた方が誤読を防ぐことができるかなと思う。情景描写について。人形の「笑顔」が言及されるが、どういう人形なのかがよくわからなかった。本当のわたしに気づいた後の、「爽快な日」という表現が、外の景色を見たものなのか、そういう行為をした自分の描写をしたかったのかちょっとわかりづらかった。女子高生の会話の雰囲気は「リアルな不自然さ」が絶妙に表現されていて面白かった。あとは、気づいていない箇所への観察的な描写には違和感がある。全体的には、作品中に作者が顔を出しすぎているかなと感じた。例えば、登場人物が読者に対して意識を向けてしまう語りなど。人形について。途中の「微笑みが戻らなくなった」描写は「狂気」という仮面をかぶっているのかなと個人的には感じた。狂気のステレオタイプを身にまとっているのかなと思ってしまったのだが、こういう「狂気テンプレート」のような描写を仮面をテーマとした作品で出すべきかについては賛否あると思う。

 質問事項について。射命丸から大きな影響を受けている(一同爆笑)。我々は幻想世界の住人からも影響を受けることができる!(強気)或る日夢に出てきて以来執筆の動機にもなっている。

 

④集団に属する限り仮面をかぶらなくてはならないというテーマにはうなづかされた。国語の教科書に載っていた類似テーマのSF作品を思い出した。全面的にテーマがむき出しになりすぎていて抵抗を覚えさせる部分があり、もう少し人形や家族などにまつわるディティールを詰めていった方が良いと思う。そういった部分が具体的なストーリーとして存在した方が読みやすくなるよねと感じる。また仮面が外れるきっかけになった部分がややご都合主義的かなと感じる。イベントとか目に見える形で引き起こしてほしかったかなと思う。難しいテーマなので長期目標として据えてほしいと思う。「道徳の教科書」という批評があったのは、筆者が見解を割りたくなかったところで割りすぎてしまったところにあるのかなと思う。

 

⑤普遍的にして難しいテーマを扱うことは難しく、そこから逃げずに最後まで書き上げた点は尊敬に値するように思われる。仮面がはがれるシーンについて、「気づき」への流れがあまりにもあっさりはっきりしすぎていて、そうはっきり分かるものなのかな、ある程度はそういう生き方は仕方ないんじゃないかなと思った。目上の人への接し方、自分の自分に対する仮面をも外してしまうのはあまりにも無防備で、主人公の思い込みなのではないかなと感じる。そういう態度はちょっと無責任なのではないかなと思う。もう少し主人公の成長を見ていきたいように思う。

 質問事項について。自分が他人に与えてきた影響などもあるように思うが……。中学の時にいじめにあったときに、悪意は伝染するものなのだと学んだ。また、よく「悟っている」といわれるが、そのルーツは誕生日にとてもやさしかった祖父が死んだと知らされたことで、死の重さを前にとても悲しい気持ちになるとともに、死の瞬間までに内外に向けて自分の価値を高めることが大事だと感じたことにあるのだと思う。

 

⑥自分とは何かを突き詰めた私小説だとすれば、エンタメとしての厚みがないのもうなずけるような気がする。自分の中での葛藤を描いている私的な作品はすごくいいなと思う。

 質問事項について。文芸やアニメに理解のある父母を見て育ったので想像力や多様性への理解が育まれた。

 

⑦仮面をかぶり続けるというのは社会的動物である人間として仕方ないように思う。ラストに真の自分を発見したとあったが、そのあとで他者の付ける仮面に気づくというのは悲しい終わり方だなと感じた。ただ、そういうラストに伴って「爽快な日だ」と結論するのは違和感がある。また、「仮面だらけで苦しんでいる世界」である窓の外をみてそのように結論付けること自体に違和感があるとも思える。

 質問事項について。恋愛相談を聞いていた時期に知った屑男のエピソードは、百合という分野への扉を開いてくれた。

 

⑧道徳の教科書を読むのが好きなタイプだったので、作品を読むのは楽しかった。本当の自分に気づいたという気づきもまた仮面なのではないかなとも感じた。個人的には、クラスの女の子のセリフ回しの違和感にリアリティがあって読むのがしんどくなったほど。こういう作品は経験の深さが生きるものだと思う。

 質問事項について。読書嫌いの人が多い高校だったが、新任の国語の先生が読書家だったおかげで認知のゆがみから救出された。

 

⑨共感しやすい内容でよかった。ストレートに題材を伝えているのは分かりやすいと思う。最後の「ありがとう」だけ「ー」がついていなくてうまいなと思った。

 質問事項について。自習時間に読んでいた本を取り上げたせんせいによって、「自習は読書ではない」のかと感じた。

 

⑩ほかの方がおっしゃる通り作品には一貫性が感じられた。ぼろぼろの人形に話しかけていたのはなんらかの象徴だと思うので、「気づき」のあとの人形に対する意識をもう少し書き出していいのかなと思った。

 質問事項について。ある二次創作本に動機づけられて創作を始めた。

 

⑪物語としての面白さを考える以上は転換の面白さを描く必要はあるが、物語としての骨格は少ないように感じた。どうして主人公が仮面の存在に気付いたのか、という理由付けや意味合いが薄いように思われる。話の転換点となるようなイベントにはきちんと伏線や因果関係を記述してほしいような気がする。主人公の友人の描き方ももう少し工夫できたのかなと思う。話のオチには綺麗さがあるので作品の完成度がもう少し向上すれば面白い作品に仕上がると思います。

 

⑫最後の一行ですべてが救われるような感じがしてよかった。作中のもやもやが解消されたように感じた。とくに人形の存在が前後半で変わっていることに感心した。前半では澁澤龍彦のいうような自己投影の存在として描かれていた人形が、後半ではだれかほかの人を思い出すようなメディアに変化していたように感じる。「わからない」が連続していく中盤の描写について。思考の混濁を表すときに、「わからない」と直截な言語表現をするよりも、普段の様々な仮面を羅列するとか、改行されない思索が連続していくとかそういう描写があるとリアリティが増すと思う。

 

⑬作品一番の魅力は人形だと思う。自分も作品を書く上で人形の意味合いに迷うことがある。作中でも人形のミステリアスな微笑みが多様に解釈できることが上手く使われていたように思う。描写もラベルもとても読みやすかった。

 質問事項について。常に何らかの影響により自分は変わるものだと思うし、さらにいえば、自分自身が他者の影響そのもので形成されるのだと思う。

 

⑭日常の会話の違和感をえぐっていてよかったなと思った。最後の読後感もさわやかだったのだが、仮面が外れる経緯についてはもう少し丁寧に肉付けできたのではないかと思う。話の展開自体は面白かった。

 質問事項について。受験期にストレスで持病が悪化したとき、youtubeで新曲を聞いた後切り替えられたという経験がある。

 

作者感想

 文体が教科書チックになってしまうことはこれから改善していきたい。台詞についてはあえて区別を付けようとした結果なので狙いは成功したかなと思う。ただ句点はただの消し忘れ。窓の外については、「世界」の暗喩のつもりで描いた。家族について書ききれなかったことについては後悔がある。仮面が外れた描写については経験のなかで書いたので、ある程度は事実に基づいているから物語の展開としては分かりづらいものになってしまったかなと思う。作品の雰囲気も「狂気」や「不気味」を醸し出そうとしたつもりはなかった。

 


 

矢来篝「恋天のヘキレキ」

 

作者挨拶

「小説で好きな締め方」「好きな二字熟語」

この作品は迷走に迷走した末の作品。もともと別の作品だったものを下敷きに書き上げたのだが、必要な描写をいくつかカットしてしまった部分がある。登場人物のキャラクターを配置したら、動かすのは「キャラクター任せ」にしているところがあるのだが、皆さんはどうしているかも気になる。

 

批評

①ハードボイルドな雰囲気は描写と台詞からよく伝わってくる。筆者がどういうやり取りを書きたかったのかもよくわかる。洋画のようなセリフ回しもある程度は雰囲気づくりに成功しているかなと思う。ただ、ストーリーの展開が若干わかりづらい。第一に、三人称、指示語によって示された人物、切り取られたシーンにはバックボーンや文脈が存在しないので、ある程度前後の流れや、人物関係を説明する必要がある。第二に、話の輪郭が定まらないまま、「イヌ」や「職業は探偵」といったウィットにとんだジョークを混ぜると、正規の文脈が乱される可能性が高い。こういうジョークは骨の太い話で書いていくべきかなと思う。醸し出したい雰囲気、完成されたストーリーをなぞる形で文章を書いていくと、思わぬ形で足元をすくわれる可能性があるので気を付けるべきかと。第三に、秘密を多くしようとするあまりに、ストーリーが不明瞭な部分がたくさん残ってしまったように感じる。それから、一人称には一人称、三人称には三人称に適した作品があり、人称を縛って習作を書く際には、その話が選択した人称にふさわしい作品かどうかを検討する必要があると思われる。ただ、今回の作品のテーマは極めて三人称にふさわしい作品テーマだと思うので、雰囲気だけでなくサスペンスの内容もきちんと詰めていくことでより良い作品に仕上がるのではないかと感じた。

 質問事項について。小説のエンドはどれも味わい深いもので好きだが、夢オチを完成度の高い作品に昇華させている作品はすごいなと思う。「完全なる首長竜の日」など。また、好きな二字熟語もいろいろあるが、「寂寥」はとくに好きな表現で自分の小説でもよく使う。作品の設計について、いわゆる「キャラクター任せ」なるものは経験則の蓄積だとおもうのでアマチュア作家には不可能だと思う。

 

②何を書いているかわからなかったが、27頁の女がもにょるシーンのセリフ回しは特に意味が解らなかった。

 質問事項について。ミステリーをよく読むので、全容が明らかになり、後悔や反省、あるいは天誅が下るなど人の命を奪うことの責任が追及されることが好き。二字熟語は「邂逅」と「鉄路」が好きです。短編では情報量が入らないのでキャラクターを肉付けしないでストーリーの道具として使う。シリーズ物のキャラつけは魅力的なものにしている。

 

③三人称で固めるというこだわりがあったのかなと思う。主観には一定のストーリーが含まれているからある程度の厚みを持たせられるが、三人称はニュートラルなので物事の流れを徹頭徹尾描く必要がある。わかりにくさはその縛りに起因しているのかなと思う。頭の中でとらえた映像を作者が語るというのは情報が欠落しやすい。語りとしての三人称を意識することが大事なのかと思う。昔話が三人称で役立つというのはその通りだと思う。三人称は上からの視点なので客観化が大事なのだが、一人称と比べて工夫が難しいところがある。主観的な説明よりもきちんと事実を示していくことが必要になると思う。個人的には語彙が豊富でカッコいいと思った。あとがきは雰囲気変わりすぎだと思う。作品の雰囲気からしてふざけてるのかと思う。ウィットとマジの情報量の差が分かりづらかった部分も多い。とくに、最初のシーンでは、三人称で描写されているのに人物の視覚情報、場所の具体的情報が少なかったところにわかりづらさの要因があるような気がする。

質問事項について。最後ににやりと笑って終わる小説など、「続きが読みたい」と思う作品が好き。二字熟語は暗銀が好き。話の作り方については、設定が物語を作るのに、物語がないと設定を創れないというジレンマが話の設計を難しくしているように感じる。実は設定と物語は重なり合うものだと思う。設定も物語も世界の断片に関することなので。

 

④全体で何を書いているのか全容が把握できないが、印象深いシーンを一枚一枚ばらばらに見せられている感じがあった。その一つ一つがどういう幹、枝で結びついているかを明らかにする必要があると思われる。自分も三人称小説を書く上で、シンプルかつ面白い口承文学はすごく参考になると思う。あとがきについて。自分もあとがきのノリで暴走しがちなので難しいとは思うが、あとがきは謝罪の場なので釈明するのはよくないと思う。

 質問事項について。自己中心的に味付けられたメリーバッドエンドが好き。熟語は星霜が好き。厨二病チックで。キャラクターの動かし方については、世界設計の瞬間に生まれるものなので何とも言えないような気がする。例えば、ハードボイルドな世界を創ったときには、ハードボイルドな動き方をするだろう。そこに筆者の意思が介在する余地はないと思う。

 

⑤三人称で進んでいくのはちょっと難しいのではと感じた作品。やりたいことを全部やりましたという文章は嫌いではない。しっちゃかめっちゃかな雰囲気になってしまったところは、もう少し作品のクールさを売りにして描写などを簡潔にしてくれた方がよかったと思う。もう少し作品とあとがきの雰囲気をあわせた方が良いと思う。次回作に期待してます。

 質問事項について。登場人物死亡エンドや発狂エンドなど、大きな喪失感を醸し出すのが好きです。二字熟語は「往生」「恋愛」が好きです。キャラクターのうまい動かし方が分からん。むしろ教えてほしい。

 

⑥正直全体の繋がりはよくわからないが、部分部分の完成度は非常に高いと思う。シツボウショウの下りは特に好き。

 質問事項について。絶望の淵でなんらかの気づきが得られるのは好き。死について考えさせるためのバッドエンドも好き。

 

⑦つながりが分かりづらく、区切れも分かりづらい部分がある一方で、表現、描写一つ一つの完成度が高いなと思った。個人的には、理詰めしていく女性キャラクターがとても好き。フローが分かりづらい部分をもう少し作品として完成度を上げていくと良い作品ができると思う。

 質問事項について。愛情のもつれの先にある死が物語の結論にある作品が好き。二字熟語では、resignationの訳語として、社会的啓蒙をあきらめた森鴎外が充てた「諦念」が好き。

 

⑧一匹の犬を女性二人が取り合う話なのかと誤解した。個人的には結構読みづらいと思った。作者と異なり、読者の情報は読む前にはゼロなので、そこは気を付けるべき。もし読者に推理してほしいというミステリアスな雰囲気を描きたいなら、何を謎にしているのか定めるべきだし、最終的に全部明らかにすべきかなと思う。人称名詞もきちんと使い分けるべきでしょう。

 

⑨端的に言って作品の内容がさっぱりわからなかった。一番の問題として、登場している人物、なされている会話、舞台設定など必要な客観的情報が頭に入ってこない。「解釈しないとわからない」作品は小説としては読みづらいものになってしまう。展開のめちゃめちゃさは意図的なものなのかなと思ったが……。おもしろいポテンシャルがいっぱいあるので、好きになれる要素が多かっただけに残念。

 質問事項について。熟語は全部好きだけど、二字熟語より四字熟語の方が好き(一同爆笑)。小説に良い締め方はない。なぜかというと終わること自体の意見が分かれるから。

 

⑩自分も最初イヌがしゃべっているのかと思ったが、最後まで読んでもよくわからなかった。実験小説だとすれば非常に完成度が高かったが、あとがきのおかげで実験小説ではないことが分かったのでちょっと残念。混沌とした単語が羅列されるタイプの作品はすきなので、そういう方向を極めるのも面白いかも。意図しないのであれば修正の余地があると思うが。

 質問事項について。自分が創作するうえでは、物語の流れが唐突にぶちぎられたかのような作品から漂う余韻を演出したいと思っている。キャラクターの動かし方については、現実の観察をもとにした妄想のリンクで物語を構築した末にキャラクターを配置するので、キャラクターの動かし方に設計を入れていることが多い。

 

⑪わかりにくさの根本は登場人物の背景のわかりづらさに起因していると思う。「女」「人間」などのわかりづらさなど、人物関係のつながりも含めて読みづらい部分があると思う。ストーリーを流してみていくときには、名前を割り当てたりと工夫することでもっとわかりやすくする工夫は出来ると思う。ただ、「何かが面白い」という実感はあり、人物の出会いや別れ、やり取り等の各場面場面に「面白くなる要素」はきちんとあるのではないかと思った。まずは、「シツボウショウ」が何なのかをはっきりと設定しておいたほうが論理の流れのかみ合いが上手くいくのではないだろうか。

 質問事項について。ストーリーの閉じ方としては、バッドエンドが好き。特に、二者の溝が埋まらないまま終わる作品は、人間の理解しえない本質を表している感じがして心にぐっとくる。キャラクターについては、展開の衝撃を生み出すために、無関係のスタートとゴールを設定し、様々なパターンで物語を設計していくといい作品になるのではないかなと思った。試行錯誤が大事だと思う。

 

⑫作品の雰囲気はすごく好き。あとは、一つ一つの言葉の使い方が巧いなと思った。あとがきについては筆者のじこしょうかいを兼ねた軽い場なのかなと思っているので、作品と雰囲気が違うのはまあいいかなと思う。

 質問事項について。小説のエンドはいずれにせよ「妙な引っ掛かり」を遺す作品が好き。二字熟語は「蛍雪」が好き。物語の設計に当たっては、作品の終わりを設計し、そこを崩さないようにやっていくことが多い。

 

⑬終わり方はすごい好きな作品なのだが、途中の経緯がよくわからんというのが正直なところ。洋画みたいなセリフ回しがとてもしっくりくる。口に出して気持ちの良い文章を書くのは非常に難しいけど、それをきちんと書いているのはすごいと思う。個人的には、女性の「人差し指を立てた」あとの空き一行が上手いなと思った。

 質問事項について。小説の締め方としては、話の終わり方が「終わりだと思えない」作品が好き。あとは「ドラえもん」のバイバインが好き(笑)。二字熟語は「曇天」の一枚絵のような雰囲気が綺麗で好き。

 

作者感想

 指摘された通り三人称と指示語などいくつか縛りを課した。一人称小説を書いているので引っ張られたかなと思う。あとがきは安心感が溢れ出てしまった。イヌは暗喩なのだがわかりづらくなってしまった。作品全体の暗喩の多さが分かりづらくなってしまったかなと思う。説明が全体的に不足してしまったので、もう少しきちんと誘導すべきであるようには感じた。