4月11日・15日 批評会

1.遥弥生「コンクリートの森のソメイヨシノ」

 

作者から

 

批評

・「せんせえ」のわりに薫を漢字で書いてるのが違和感があった。先生も漢字になっている。ひと月分の通塾が「杞憂」に関しては使い方が間違っているのではないかと思う。桜を使った対比と、幼稚園児というのには違和感があった。対比の構成工夫をもう少し突き詰めていったらいいのではと思った。

・作者の趣味がよく出ているなと思った。教師の生徒に対する恋愛感情はベターなテーマだが、表現が非常に文学的でよかったと思う。特に好きだった表現は、「カッコロク」の箇所が上手かったと思う。2の視点主の登場がやや違和感があった気もする。マサ君イケメンすぎるやろ。薫の字は漢字にしてしまったのがやはりちょっと違和感があったと思う。「人生の先輩は洋輔だけど塾の先輩は俺だ」というセリフが、子供のマウントをとろうとする傾向が現れていてよかったと思う。

・年季が入ってるなという感じがして面白かった。「何も言わず教室から出ていった」という表現が、急に出ていったように読めてしまった。情報の出し方を工夫した方が良いと思う。書き直しとかそういう工夫を施した方が良いと思う。

・一読したときに女性の作者かなと思った。テーマも女の子が書きそうだなと思ったし。男性の美貌の表現が上手かった。最後の二文が対になっているのが綺麗でよかったと思う。

・女性っぽいと思ったが、男性だと知ったときびっくりした。読みやすかったと思う。設定とかがドラマっぽいと思った。二つ目のパートの終わり方がもっと衝撃的だと予想していた(第一パートの終わり方が尻切れトンボだった?)。洋輔の視点を添えたらいいと思った。

・視点主がマサ君に変わったときには面食らったが、キャラの作り込みが徹底していて巧かったと思う。桜がキーワードになっていたと思うが、ソメイヨシノをタイトルにした理由がわからんかった。

2つ目のパートの、勇気づける場面で、洋輔がしょぼくれるところまでは分かるんだけど、推測のプロセスをもう少し長めに取っておくといいと思う。マサ君のことを1でもう少しクローズアップしておくといいと思った。伏線的な。全体的にパート2のクライマックスをもう少し引っ張ってあげるといいと思う。2パートの語りがすごく多い中で、第一パートとの台詞バランスに違和感があった。

・ラストの対比がすごくきれいに終わっていた。制服を脱いだあとに「先生じゃない」が来るっていうのが良かった。先生の「不安感」の正体がわからん。

・薫という字を平仮名にすると今度はちょっと読みづらくなる気もした。だから漢字の方がスムーズに読めるといいと思った。自分でも気づいて良いと思った。

・こういう小説を読むのは良いと思った。語彙力が低下する快感がある。ただマサ君の描写がやや少なすぎた気がする。もう少しマサ君の描写が多くなるといいと思う。

・小学生の視点が鋭すぎる。きれいにまとまってはいるが、小学生という設定に無理があると思う。勢いよく書いてしまう癖があるので、データとか伏線とか理性的な方向性に基づいているのかという方が気になる。

・前回作品と全然イメージが違う。マサ君の言葉遣いとかがきちんと子供らしくなっていて良いと思った。次の日見直すと酷いと思った経験もある。

・作文とか日記とか、書いている最中は自分が天才であるかのように思えるのに、次の日見直すと台無しってことがあるよね。

・2が、文章から「ちょっと調子乗ってる男の子」感が伝わってきて良いと思った。個別指導で小学生と高校生を両方見ることはあるのか?文芸部で小説を書いていても、自分の作品を見るのはつらい。

・洋輔くんの「シンケイシツ」というキャラクター性と、マサ君の一言で突き動かされるのは 書いている途中から

・恥ずかしいと思いながらも最後まで書き上げてしまう。自分の中のことを描いている作品を見直すのは自分の中の…

 

作者から

 

2.朽木「時を超えるって難しい」

 

作者から

「海外旅行に行ったことはありますか」朽木の語源はクッキーです。新歓号に合わせて勢いで書いてしまいました。ガバいところは指摘してください。旅行で何を楽しみにしていったのか教えてください。

 

批評

・字が詰まっていて見づらいような気もしたが、軽い口調で続いているので意外と読みやすいかなと思った。時間を地層としてみるという視点が面白いなと思った。

・地層に関しての理論がネタに関係してくるのに、途中でやめるのは展開上無理があると思った。きちんと全部書いた方が良いと思った。目が動かなくなったという衝撃と左手を失うという衝撃が同居していて、きちんとかき分けた方が良いと思った。手回し発電機を見てから、びっくりするというセリフを入れていった方が良いと思った。語りの中で場面を想像させるのが難しいなと思った。

・好きなタイプの作品。物語性があった。モノローグとしての役割はともかく第一段落は長すぎると思った。書き方がやや古い気がする。それ以外の箇所については、SFにありがちの科学オタクの暴走が少なくて読みやすかった。

・面白かった。一人語りの中で、相手がいる感じが伝わってきて良いと思った。偉そうに語っていた作者が、実は下着一枚、しかもハゲてるという状況は面白いと思った。もう少し工夫するとさらにユーモアが伝わっていいと思った。

・ぬいぐるみのぼろぼろさが最後に伝わってきて良いと思った。

・自ら最後にエネルギー変換装置に入り込もうとする絶望感のえげつなさが伝わってきてヒヤッとした。

・理系科目がダメなせいでSFは苦手だったが、コミカルな要素が入っているこの作品は極めて読みやすかった。硬派なSFなのに「酔う」とかコミカルなエッセンスが挿入されていて読みやすかった。

・時間地層理論という言葉がかっこいいなと思ったが、読み進める中でそれがどういう理論なのかよくわからんかった。人形を持ってくるというのは過去のものなのか、パラドックスでは? 物を送ると時間が崩壊するという発想も、もう少し丁寧に詰めてほしかった。なぜ呼吸できるのか、という疑問点も残った。ほかにも、科学的に詰め切れていない箇所が多かった。いろいろな場所を垣間見るというのも時間が止まっていて難しいと思った。手回し発電機では化石化してしまって難しいのではと思った。もうすこし面白い発想を詰めていってほしかった。

・地層時間理論のアイディアは面白かったが、作品の目新しさはあまりなかったかなという感じ。断層とか褶曲とか、地層ならではのアイデアを取り入れてほしかった。

・俺

・考古学専攻として地層という言葉に目が行ってしまった。地層時間理論という発想もとても面白いので、地質学の知識を取り入れて詳しく作り上げたらもっと面白いのではないかなと思った。作品中でも、ボーリングの所で発掘と思しき行為などがあって片鱗が見える。だんだん追い込まれていく経緯がだんだん描かれていく箇所については良い意味で衝撃を与えられた。結果も救いようのないもので悲しいなと思った。

・率直に面白かったです。過去に取り込まれてしまうという話が斬新だと思った。日本の外に出たことは無いが、瀬戸内海を渡って東京に来たので関東は異世界のようなものです。旅行の楽しさは、新しいものに出会うことで自分の内面に新たな側面を見つけるのが楽しいのだと思う。

・アイデアが斬新だと思った。主人公の最初の語りがいかにもな感じで面白いと思った。海外旅行で一瞬だけ外国の人とコミュニケーションをとれる瞬間が面白い。

・筒井康孝の処女作に雰囲気が似ている。技術のせいで苦しめられるというオチが近似していて面白いと思った。

・「水曜どうでしょう」的な、海外旅行の魅力は自由なハプニングにあると思う。創作にもその楽しみは通じると思った。

・会話文から始まっている最初のパートは、開業がなくて読みづらかった。「余裕がない」という印象。泉鏡花「高野聖」ですらやや読みづらかった。左手を装置に入れたのに救済されなかった理由がよくわからない。最初の気取った台詞が、髪の毛と左手をロスとした状態でやってると思うと笑える。台湾に学校の取り組みで行ったが、知らない人と知らない言語で会うのが旅行の楽しさだと思う。

・話の構成として、長い語りで入った後、語りで終わるものになっているが、どうせならさいごまで全部語りにしてしまえばいいと思った。

・この博士が化石化しているのに口が動くんだなと思った。

・俺

・地表が現在に固定されてしまうことを考えると、主観に依存した時間のとらえ方と地層理論はなじまないように思える。過去の人間との邂逅の影響を加えるといいと思った。

・地層の知識をうまく利用しながら、地層時間理論を自分の小説のネタに使ってみたい。カナダにホームステイしたことがあるが、カナダ固有の習慣や、移民文化など、異文化を学ぶ上で参考になった。

  

作者から

くどい部分があるかなと思って削ってしまった部分に重要なところがあったなと痛感した。科学的な詰めとかアイデアと

か、本当はもっとやりたいことがあった。地層時間理論はフリー素材としてお使いください。