批評会(4月15日)

 今期初批評会となる本日は新入生歓迎号から2作品を扱った。

作品名:誰でもよくないどこかの誰かが彼女を幸せにしますように

作者名:神城綾河

質問事項:特徴的だと思う文章はありましたか?

作品あらすじ:女の子から告白される女の子(いわゆる百合モノ)を、叙述トリックによって男の子のように描こうとしたもの。告白は失敗に終わり、その後の関係が全く切れていたことが回想形式で語られる。

~議事録~

 作者の狙った叙述トリックは残念ながらうまく機能はしなかったようだ。そもそもこの叙述トリックの必要性を疑問視する声もあり、厳しい意見が目立った。また、比喩のワンパターンさを指摘する声も多く、今後の反省材料が色々と出された。また、人物の感情表現の掘り下げも甘いという指摘も出た。5Pという制限があるとはいえ、それを読者に言い訳するわけにもいかない。掘り下げ方の工夫やバランスは、ほかのメンバーも他人事ではないだろう。

 今回は書き手の性別にまで話が及んだ。使われている比喩や表現に、男性らしさと女性らしさが混在しており、読者を惑わせる一因となった。今回の叙述トリック的な面では有効に働く部分かもしれないが、通常の小説においては読者の感情移入の妨げになりかねない。一字一句の選定に慎重さが問われる。

 しかし、部分部分のフレーズや、占めなど要所でパンチの効いた箇所も見られ、好意的なとらえ方をされる場面も多々見られた。前半の否定的意見は、作者の腕に対する期待の裏返しというものだろう。

作品名:魔法使い京葉編

作者名:かんたろう

質問事項:説明描写を自然に入れる改善策は?

作品あらすじ:千葉県を舞台に、社会の裏で暗躍する魔女や魔法使いたちの姿を描いたSFファンタジー。魔法使い達のグループに所属する主人公が、敵対する組織にさらわれた想い人を追って、津田沼の空を翔ける。

~議事録~

 一言で言えばぐだぐだな批評会になってしまった。仕方がない、作品がしまっていないのだから。ある程度編集会でカバーできる案件ではあるのだが、とにかく誤字脱字、誤った表現の多用が見られた。編集部側も終始恐縮した感じではあったが、やはり作者自身が間違いを正しておかねばならない。締め切りを言い訳に作品のクオリティを下げることがあってはならないのだ。その前提ができていない作品だった。

 作者自身が質問している通り、この小説は説明描写に苦労していた。ファンタジーにおいて、世界観の提示は必須の事項であるがすべき描写がはぶかれ、どうでもいい描写がなされているところが散見された。尺であったり、テーマであったり、キャラ設定であったりと構想の段階から更なる練り直しが必要な作品だという意見が多かった。作者の今後の成長が期待される。

~総評~

今回は今期初かつ新入生のためのおためし批評会という形ではあったが、新入生からの鋭い意見もたくさん見られ、非常に活発な批評会となった。書き手はより高いレベルの作品を自ずと求められることだろう。一人でも多くの新入生が我が三文文士会に入会してくれることを願うばかりだ。