編集の鈴木です。先週の批評会について報告いたします。
今回の批評会では、2012年度の冬号から副長工兵氏の「Don't trast over 20」と松葉惇平氏の「デイジーが見上げた空」が取り上げられました。それぞれの質問事項は、「主人公の心情変化は描けていたか」、「不足に感じたところはなかったか。前半読んでてだるくなかったか。もう一つ、最後まで読んだ後に見てもらいたいのですが、どの時点で登場人物の性別が把握出来たか」というものでした。まず副長工兵氏の「Don't trast over 20」については、
・(質問事項については)描けている
という意見が出されましたが、一方で
・人間関係が錯綜していてわかりにくい
・女性二人の関係性をもっと明確に描いてほしかった
・作者は一人称のほうが書き馴れているのではないか
・四人もの人物が出てくる構成だが、相互に影響を与え合うような展開がないのが残念
・(秋号に掲載された同氏の作品の続編にあたるので)そちらを読んでいないと内容を読み取るのが難しいのではないか
・個人の心理描写が文中のほとんどを占めるが、主人公以外の人物の心情変化が読み取りづらい
などの意見が並行して提出されました。ただし、最後の意見については、「書かないことそのものの強みがある作品なので、一概にすべてを詳しく叙述する必要はない。行間から十分読み取れる範囲」だという反論もなされました。
つぎに、松葉惇平氏の「デイジーが見上げた空」については、
・世界観の説明と登場人物の描写、ともに不足してしまっている
・心理描写も削られていると感じた
・具体的な場面(幼馴染の首を刎ねるシーン)などの描きこみがもっと欲しい
・キャラクターの差異化が必要と感じた
などの意見がありました。しかし、
・(質問事項について)不足は感じたものの、作者が作品としての制約(ページ数制限)に合わせた結果生じたものであるということなので、それは仕方のないことである。しかし、全体の構成はバランスよくまとまっていてよかった
・ラストの一文で話を上手く落としている
など、小説そのものへの俯瞰的な観点からの評価では好意的な見解が多くよせられました。また、
・(質問事項について)読んでいて『だるい』とは感じなかった
・(同上)登場人物の性別に関しては、最後まで気づかなかった
・読者を煙に巻いている、再読しても違う楽しみ方ができる
・殺伐とした雰囲気がよい、技巧的な表現のたまもの
・選択されている語句にセンスを感じる
・文章が上手い、人工的な会話文も文体と調和しているので違和感がない
といった肯定的な意見が多数見受けられました。
以上で批評会の報告を終わりにします。
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